『散歩のついでに富士山を登頂した人はいない』という言葉があります。
目標を設定せずに闇雲に何かをしていても、大きな目標を達成することはできない、という意味です。
これは、会社経営でも人生でも同じことが言えるはずです。
しっかりとした目標設定をしなければ、高みに至ることはできません。それに、一体どのようなペースで進めばいいのかや、目標に対して今自分がどこにいるのかも把握することができなくなってしまいます。
うまくいっていない会社は大抵、目先のことだけにとらわれてしまっています。
「今期は赤字にならないように頑張ろう」とか、「税金をどうやって払おうか?」などのことだけに注意がいってしまい、長期的な目線を持つことができていません。
一方で、うまくいっている会社は長期的な目線を持っており、目指すべきゴールを見据えて経営を行っている場合がほとんどです。
目指すべきゴールがあるのとないのとでは、経営に対する心構えが大きく変わってくるのは間違いありません。
なので、法人顧問FPは必ず最初に目指すべきゴール設定を行います。
現状分析の重要性
そして、そのゴール設定を行う為に必要なのが現状分析です。
『自分が一体今、どの位置に立っているのか?』
ということを知ることができれば、目指すべきゴールはおのずと見えてきます。
この現状分析を行う時に、法人顧問FPは法人財務だけではなく個人資産についても一緒に見ていきます。
法人と個人というのは密接に結びついており、切り離して考えることはできません。
例えば、役員報酬を変えるのであれば法人財務と個人資産の両方に影響が及びますし、退職金の計画を立てる時も同じことが言えます。
これは、社長だけではなく従業員の給料、退職金にも当てはまります。
では、法人顧問FPがどのような現状分析を行った上でゴール設定をしていくのか、これから一緒に見ていきたいと思います。
法人財務の分析
まずは、法人財務の分析を行っていきます。
法人の決算書を拝見させて頂き、どのようにお金が流れているのかを把握しながら、
- 現金預金がしっかりと積み上がっているのか
- 借入金が適正な範囲に収まっているか
- 労働分配率(社員への給料)が適正かどうか
- 金融商品の保有や、節税対策が適切なものになっているか
- 会社を守るための節税の仕組みが整っているかどうか
このようなポイントを一緒に話し合いながら確認をしていきます。
また、企業価値を第三者の目線から分析するレポートを作成し、『もし会社を売却したとしたらおおよそどれくらいの金額になるのか?』ということや、『銀行が財務内容を見た時にどのような評価を下すのか?』ということを一緒に見ていきます。
この会社価値レポートを見ることで、『社長』ではなく『会社のオーナー』としての立場で財務状況を確認することができます。
将来のゴール設定の為には、会社の売却や事業承継などの選択肢をしっかりと考えることは必須になります。客観的な目線で自分の会社の企業価値を見ることで、理想のゴール設定を描く助けになるはずです。
また、企業価値を数値にして明確化することで、どのように経営を行うのがベストなのかも見えてくるというメリットがあります。
この分析の結果、『良かれと思ってやっていた節税対策が、実は会社の価値を落とす結果に繋がっていた』ということがわかる場合も多く、企業財務の分析だけでも大きな価値を感じていただけることがよくあります。
個人資産の分析
法人の財務分析と同時に、個人資産の分析も行っていきます
- 現時点での支出はどうなっているのか
- 現時点での収入はどうなっているのか
- これからどのような出費が予想されるのか
- 将来、どのような暮らしをしていきたいのか
このような内容をヒアリングしていき、現状のまま進んでいった場合に個人資産がどのように推移していくのかを数値化・グラフ化していきます。
法人顧問FPは『個人と法人を両輪で見る』ということを重視しています。
法人と個人の状況をさらけ出すことは少し勇気がいるかもしれませんが、2つを両輪で見ることができないと片手落ちの計画になってしまいますので、この2つの視点からしっかりと分析を行っていきます。
また、会社の従業員の方にどのような人生を送って欲しいのか、退職金をどうするのかなどについてもヒアリングを行い、現状を把握します。
ゴール設定の提案と決定
このように、個人資産と法人財務の分析ができたら、それを元に『目指すべきゴール』を設定していきます。
まずは、現状を分析した上でいくつかのパターンを用意しますので、そちらを見てみてください。
会社を売却した場合や、退職金を多めに設定した場合、役員報酬を変更した場合など、現状から見て現実的なパターンを見ながら
『これからどの方向に進んでいきたいのか』
ということをイメージして頂き、一緒に具体的なゴール設定を考えていきましょう。
このゴール設定というのは、人生におけるゴール設定です。
- 会社を50歳時点で売却して早期リタイア生活を送りたい
- 45歳からは海外に移住して新しい人生をスタートさせたい
- 財務状況を良くして万全な体制で後継者に会社を引き継がせたい
- 生涯現役でなるべく長い間ビジネスに関わりたい
- 個人の資産を1億円にできたら、後は自分の好きなように仕事をしたい
このように、将来どのような状態を実現できれば幸せなのかを考えた上でゴール設定を行っていきます。
人はみな独自の価値観を持っていますので、10人いたら10通りのゴール設定ができあがります。なので、ここではぜひあなたの考えをお聞かせください。
そして、ゴール設定ができたら具体的に何をすればいいのかという行動目標に落とし込んでいきます。
何年でどのくらいの数字を達成すればいいのか、その為には1年後、2年後にどのような状態になっているべきなのか等、目標を具体化していくのです。
そうすれば、達成の為のモチベーションが湧きますし、明確な目標が見えるようになるので行動がしやすくなります。
法人顧問FPは、このような長期的なゴール設定を大事にしています。
決算の時に1年を振り返って「今期はこうでしたね」と過去を振り返ることも重要ですが、長期的な視野を持ってゴール設定を行うことは、経営だけではなく人生にも良い影響を与えるはずです。
このゴール設定ができたら、次は法人財務と個人資産の改善・最適化のプロセスに進んでいきます。